はっけん号とはどんな船?

◆ 北湖の激しい波にも強い優れもの ◆

はっけん号は全長18.9m、幅6.2m、総屯数36屯、 アルミ軽合金製の双胴船で長さの割に横幅が広く 横波に強い船型をしています。琵琶湖は内陸の湖 ではありますが周囲に1,000メートル級の山があ り、また日本海から北西部の低い山の上を通り湖 の南東部へ吹き抜ける風の通り道となっており、 複雑な風が時折強く吹きます。それにより1~1.5 mの高い波が発生します。海とは違い波長が短い ため小型の船は大きく縦揺れします。 はっけん号はこれらを考慮し、18メートルの長 さで波頭と波頭をまたぐべく設計され、また船首 が鋭くナイフのようにとがっていることにより水 切りが良く、北湖の大波を前方から受けても比較 的大きく上下することなく耐えることができます。
◆ 調査機材プラス18名(含乗組員) を載せる湖上の研究室 ◆

総トン数は36屯となっていますがこれは船全体 の容積が36tということで、1tは約2.83㎥、従っ て甲板下の船体部分と甲板上の建屋部分を併せて 容積が約101.88㎥あるということです。通常客船 でこの大きさだと50~70人程度乗客を乗せること ができますが、はっけん号はクレーンやウインチ を備えており、室内の部分が比較的少ないため乗 組員を含め定員は18名となっています。 総トン数が20tを超えると大型船舶となり、操 縦するには海技士の免許(海技免状)を持った船長
と機関士が必要になります。はっけん号は清水船 長と大門機関長というベテランの海技士を迎え、 森川甲板員と船長見習い的な役割の私を加え計4 名が乗組員となって動かしています。
◆ びわ湖 と びわ湖トラスト、 そして「はっけん号 ◆

平成28年5月30日、はっけん号はびわ湖トラストの自然科学教育の為の実験調査船という新たな 活躍の場を得て試運転の日を迎えました。平成27 年3月以降、桟橋に係留されたままで1年2か月経 過しており、はたして無事スムーズな始動ができ るか一抹の不安がありましたが、エンジン他大部 分は1年2か月間そのままであったにもかかわらず (バッテリーは交換しましたが)、たいした支障も なく始動しました。 以降平成28年中は、びわ湖トラスト会員や企業 の皆様の実験機器試験での御利用と、科学技術振 興機構(JST)の次世代科学者育成プログラム並び に日本財団の「琵琶湖で学ぼう地球環境の保全」 プログラムにおいて中学生の湖上実験学習の舞台 として、主に北湖を中心に18回に亘り航海しまし た。その中には風が強く波高1メートルを超える 日もありましたが、無事に乗り切ることができま した。乗組員としては慣れないことの連続でありましたが、事故もなく滑り出すことができました。 御乗船いただいた方々のご協力の賜物と心より感 謝申し上げます。

(下村 力)