世界の水資源と大切な琵琶湖(栗原博士講演要旨)

   演題「世界の水資源と大切な琵琶湖」
   H24年5月12日 琵琶湖大津館にて
   東レフェロー 栗原 優 博士

講演要旨

 地球レベルで考えると急激な人口増加に対し、食料・エネルギー・水の不足が重要な課題である。
いまや温暖化対応で炭酸ガスの削減と同じぐらい水の確保が重要であるが、
そのまま利用できる水は0.01%とごくわずかである。
70億人の内、7億人が飲み水に苦労し、27億人が下水処理もままならない状況で、水の確保が非常に重要である。

 飲料水の確保について大量のエネルギーを使用する蒸発法が大型プラントで実施されてきていたが、
ここ数年来逆浸透膜による海水淡水化プラントが世界各地で実用化されている。
すなわち21万トン/日の大型プラントでサウジアラビアでも逆浸透法が30%以上低造水コストになっている。
逆浸透法での今後の最大の課題は省エネルギーで現状3.0kwh/m3が1.7kwh/ m3と低下の方向にある。
この方式のプラントは年25%の規模で成長しており、蒸発法から膜法の時代になってきた。
塩分除去率は99.85%以上であり、100円/トンは琵琶湖の水から作る飲み水150円/トンより安価にできる。

 海水淡水化の世界のTOP9プラントのうち70%のプラントで、
東レ・日東電工・東洋紡の膜モジュールが使用されているが、このコア商品の売上高は全体の数%しかなく、
今後プラント設置・運営も含めたトータルビジネスとしての国家戦略を策定し、世の中に貢献してゆく必要有り。

 興味深いことは膜の世界のトップメーカの東レ・日東電工・東洋紡・旭化成は
琵琶湖の周りで研究をスタートし、また一部物作りしていることである。
この膜方式で放射性セシウムも99.7%除去出来ることが判明し、福島で実際に活用されている。
さらに有毒なヒ素もこの方式で除去可能である。

 この講演を聴いて、琵琶湖が非常に安定した大切な水源である事を再認識させられました。
(記録:びわ湖トラスト理事 高木順)